「もしも」


この憎たらしい程の晴れた青空の下で
もしも、の話をしよう。

「もしも、俺が裏切り者だとしたら・・・お前はどうする?」
「うーん」
「おいおい、ロイドく〜ん。今スルーしただろ〜」
「ん?」
「おいこら・・・本気で流してたな・・・」
やっとここでロイドが顔を上げた。その視線は遠くを見ている。
その手元には、何らかの細工をしていたらしい形の未完成な木の欠片があった。
それに集中していたらしく、隣にいたゼロスの言葉もよく聞いていなかった様子だ。
「ん・・・聞いてたよ」
「ウソつけ」
「聞いてたって。ゼロスが裏切り者だったとしたら、だろ?」
驚いた
「何だ〜聞いてたんじゃないのよ〜」
「だから聞いてたって言っただろ」
あきれたようなロイドの顔
「んで、ハニーはどう思う?」
「ハニーはやめろって・・・」
今までにかなり場所を問わず連呼されている為か、本当にうんざりしている様だ
「いーじゃないのよー。なーなー、どう思う?」
ロイドの右肩に寄りかかる様にしてなおも聞く。
答えが欲しかった
「うーん・・・そうだな、とりあえず」
「とりあえず?」
ロイドは本気で考えているらしく、腕組みで悩んでる
「とりあえず・・・理由を聞いてみるかなぁ・・・」
「はぁ?」
その返答に思わず間の抜けた声を出してしまう

「何だそれ」
思わず、笑ってしまった
「笑うなよ。だって俺だって絶対正しい事してるって自分でも言えねーもん」
「え・・・」
それは普段の彼からはおおよそ見当もつかない台詞だった
「だって、そーだろ?俺は誰かが犠牲になるこの世界が嫌なだけなんだよ、きっと」
腕組を解いて空を見上げるロイド
その顔はなんだか、悲しそうで
「コレットが神子じゃなかったら、俺は旅に出る事も無かったかもしれないだろ」
「そしたら、世界の真実を知る事も無かった、か・・・」
「そうだな、テセアラの皆とも会えなかったかもな」

「まあ、結局会えたからいーんだけどな」
ちらと見たその横顔は、何だか嬉しそうだった
「んで、最初の続きなんだけどな・・・」
このまま流してしまえば良かったのかもしれない。
ロイドの返答しだいでは傷つく自分がいるのをうっすら自覚しながら
それでもゼロスは答えが欲しかった
「最初のって・・・理由うんぬんか?」
「そ、なんで理由聞きたいワケよ?」
「何でって・・・」
ロイドは空を見上げたまま頭を掻く
「だからさぁ、俺は頭悪いだろ?だから相手が正しいかもしれないし、おれが 間違ってるのかもしれない」
「ほー、えらい殊勝じゃないのよ、ロイドくーん」
「ん・・・まぁな。それになぁ」
「それに・・・?」
それまでこちらを見なかったロイドが始めてこちらを向き、にっ と笑った
「俺はゼロスが裏切り者だなんて思った事、ねーから」
不意打ちだった
言葉も笑顔も
ゼロスは寄りかかっていた肩にそのまま顔をうずめてしまった
「重いって、ゼロス」
言って、ゼロスの頭を左手で押しのけようとするが、その手が止まった

「ゼロス・・・」
「・・・何だよ」
答えた声はとても弱くて
「・・・・・ひょっとして、泣いてる?」
「誰が泣いてる・・・かっつーの・・・」
言葉とは裏腹に、ゼロスは顔をロイドの肩に預けたまま手を伸ばして、ロイドに抱きつく
その力は、強くもなければ、弱くもなくて
どう対応したらいいか困ったロイドはゼロスの抱き月から逃れた左手でゼロスの頭をなでてやった
子どもにする様な事だが、それ以外に思いつかなかったから

「子どもか、俺さまは・・・」
「うるせーな。他に思いつかねーんだよ」
しばらくしてそんな軽口を言い合いながらゼロスは顔を上げようとはしなかったし、ロイドも手を止めなかった

「ロイド・・・」
「ん?」
「・・・さっきの質問、忘れてくれ・・・」
「分かった。いくらでも忘れてやる。ただな、一つだけ」
「ただ・・・何だよ・・・」
「俺はゼロスを信用してる。これだけ言っておくよ」
「・・・サンキュ」
「どーいたしまして」

本当に最近自分の涙腺はどうかしてる、とゼロスは思った
昔の自分からは考えられない
短期間の間に随分変わってしまった自分
変えたのはきっと、こいつなのだ

「・・・ゼロスってさ、意外と寂しがりやだろ」
「知るか・・・んなもん・・・」
なんとなく悔しいので抱きしめてる腕に力を込める
「痛いって」
「知るかバカ」


結局2人はそれぞれ思い思いの行動を取っていた仲間に夕飯だと呼びに来られるまでずっとそのままだったが
かろうじて、ゼロスの泣いた事はゼロス本人とロイド、2人だけの知る所となったのであった


もしも、の話をしよう

もう、絶対ありえない「もしも」だけど



              end

   「たまごレンジ」のたまごさんとレンジさんに捧げました〜
   改めて読むと・・・・恥ずかしい!!!!!
   こんなのよく貰ってくれたね・・・たまごさん、レンジさん・・・・
   因みに、これがTOSの初小説になります〜


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